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【SS】黄金の蜜
【虫パラレル】カマキリゾロ×ミツバチサンジリクエストありがとうございました!ゾロ誕話にさせていただきました。
続きからですー
ここは、虫の仲間たちが平和に暮らしているサニーの草むら。
カマキリのゾロは今日も雑草をガンガン斬って己を鍛えていた。そんな鍛錬マニアで恋愛ごとに興味のない硬派キャラ扱いされがちなカマキリゾロだけれど、前からずっと気になっているヤツがいる。
……来た。金色の羽を持った、ガラの悪いミツバチ。
「あ、クソカマキリてめェ! また草斬ってやがるな! あんま斬りすぎるなよ、休む場所なくなるだろ」
ミツバチのサンジは高く飛び立つと上空からゾロめがけて鋭い蹴りを入れてきた。ゾロは両手のカマでそれをしっかりガードをする。こちらから斬りかかるとサンジは軽やかにそれを避けた。こんな小競り合いは日常茶飯事だ。ゾロは、サンジとのこんなやりとりを楽しく思っている。
散々乱闘した後、サンジは空を見上げて太陽の位置を確認した。太陽を見れば、だいたいの時間がわかる。
「こんな時間じゃねェか。メシの支度。おれは暇人のてめェと違って忙しいんだ」
「んだとォ」
「うわ、顔近づけんなクソ緑、おれ気味の悪い系の虫苦手だっつってんだろ」
「カマキリは気味悪い系じゃねェだろ、それにてめェだって虫じゃねェか」
「いーからてめェも何か食材集めて来いよ」
サンジは華麗に飛び上がってキッチンのある巣の方へ帰っていった。仲間たちの食事を用意するのはサンジの仕事だ。
いつも金色の羽でゾロの周りをちょこちょこ飛び回って何かとつっかかってきて、口悪くて足癖も悪くて凶暴で……それなのにゾロはそんなサンジに惚れている。しかしこれといった進展もない。いつもケンカしてばっかりだ。
それから数日後。草むらから離れた場所を探索していたら食材がたくさん集まったのでサンジに持っていってやろうと思い、食材を抱えてサンジの巣を訪れると巣の前でイナゴのウソップとアリのチョッパーが泣きそうな顔でオロオロとしていた。
「ウソップ、チョッパー、こんなとこで何してんだ」
「どうしよゾロ、サンジがずっと帰ってこねェんだ!」
「あのアホミツバチが? 何かあったのか」
「ゾロを驚かせるためにゾロには言ってなかったんだけどよ。今日はゾロの誕生日だろ、だから今日の夕方にこっそり誕生日パーティーの準備をしてな、みんなでゾロを呼びにいって盛大にパーティーを始めることになってたんだ」
そういわれれば、今日はゾロの誕生日だった。朝から特に誕生日のことを誰にも言われなかったし、すっかり忘れていた。ゾロが自分の誕生日を忘れるたちなことを知った上で、そのサプライズパーティーのために仲間たちはわざと夕方までゾロに誕生日というキーワードを一切言わなかったのだろう。
「で、サンジがそのパーティーに出す料理のための蜜を取りに行って、それきり帰ってこねェ。一時間以内には戻るって言ってたのによォ。もう何時間も……」
「蜜?」
「黄金の蜜っつー、すげェ貴重な蜜だ。ミチバチのサンジがその蜜を加工することによって、超極上のはちみつになるんだ」
「どこまで行ったんだ?」
「その蜜はここいらじゃドレスローザの森の奥の方に咲いてる花からしか取れねェそうだ」
ドレスローザの森の奥の方と言ったら確か、ドフラミンゴというえらい強い蜘蛛のナワバリでかなり危険な場所だ。普通の虫はそんな危険なところ近づこうとは考えない。ゾロも、さらに修行を積んだらそのうち力試しに行ってもいいかとは思っていたが今はわざわざ行ったりはしない。
「あんな場所、誰も近づかねェだろ」
「危険だから止めたんだけどよ、サンジのヤツ、ゾロのパーティーに出すホットケーキにそのはちみつを使いてェって。そのはちみつを使うとマジでクソうめェ、甘いモノそんな好きじゃねェゾロでもぜってェうまそうに食うはずだって。行った場所が場所だけにサンジに何かあったんじゃないかと思ってこれから探しに行こうって話してたんだ」
サンジはゾロの誕生日パーティーのためにそんな危険な場所へ行ったらしい。ゾロはそれを聞いたらいてもたってもいられなくなった。探しに行かなければ。しかし、あの森の奥は小さい虫ではとても厳しいだろう。チョッパーなんか特に。この中ではゾロが適役だ。
「お前らはここで待ってろ。おれがミツバチを探してくる」
「頼んだ、気をつけてなゾロ」
ゾロは大急ぎでドレスローザの森へと向かった。たしかこっち方面であっていたはずだ。
森の入り口から森に突入しひたすら森をずんずんと突き進んでいたら、急に全身がピリッとする空気になってきた。この張り詰めた空気、きっとドフラミンゴのナワバリが近い。
慎重に進んだ先のエリアには、ドフラミンゴの蜘蛛の糸で作られた蜘蛛の巣が至るところに張り巡らされていた。精巧な網目状の形をした蜘蛛の巣の数々はこうして見るとある種、何かの芸術作品の類に見える。
その蜘蛛の巣の一つに、サンジはいた。誤って蜘蛛の巣にひっかかり、身動きがとれなくなってしまったようだ。
「おい、ミツバチ!」
「ゾロ……?」
「何やってんだてめェは!」
「黄金の蜜は取れたんだけどよ。急いで帰ろうとしたらおれしくじちまって」
「ドフラミンゴは……気配がねェから不在か」
「ああ。ドフラミンゴが出かけて行ったのを確認してから入ったからしばらくは戻ってこねェと思う」
「戻ってくる前に帰るぞ」
「悪ィなゾロ……」
「いいから、じっとしてろよ。二刀流……鎌……斬り!!」
技を繰り出すとサンジを絡め取っていた糸がスパッときれいに切れて、糸から解放されたサンジをゾロは両手でしっかり受け止めた。逃げ出そうと必死でもがいたのか、サンジの美しい金色の羽は傷だらけになってしまっていた。これでは飛べないだろう。
「大丈夫か、帰ってチョッパーに見てもらえ」
「ゾロ、あの瓶拾ってくれ」
傷だらけのサンジが目線で合図した先にはサンジの青いリュックと、蜜らしきものが入った瓶が転がっていた。サンジが糸にひっかかった時に投げ出されてしまったものだろう。地面が柔らかい草で覆われているおかげで瓶は割れておらず、フタもしっかり閉じたままで貴重な蜜が一滴もこぼれていないのを確認するとサンジはほっとした表情を浮かべた。ゾロは瓶を拾いリュックに入れると、そのリュックとサンジを背中に乗せた。
「瓶、リュックに入れたぞ。急いで帰るから捕まってろ」
「来る時、飛びながら木に目印つけてきた」
「わかった。それを辿ればいいんだな」
その目印を辿り、サニーの草むらへ帰……ろうとして数十分。先ほどから同じ場所をぐるぐる回っている気がする。背中に乗っているサンジがついに核心をつく一言を発した。
「おれたち、迷ってねェ?」
「おかしいな」
来る時は必死で走ってきて奇跡的にサンジを見つけられたが、帰り道がわからなくなってしまった。進んでも進んでも木が立ち並んだ同じ風景が続いている。
「つーか、目印が全然ねェじゃん!」
「目印を辿ったんだけどな」
「いつの間にか目印からそれたんだろ! 目印が見つかんなきゃ正しいルートに戻れねェよ」
「とにかく進むしかねェな」
背中からずり落ちそうになっているサンジをよいしょ、とおんぶしなおしてゾロは先に進んだ。しかし、森の出口らしきものが全然見えてこない。ゾロはまだ体力に全然余裕があるから歩き続ける分には大丈夫だけれど、早く帰らないとサンジの怪我の手当てができない。
それから少し歩いたら、ゴールの見えない森の中でテントウムシに出会った。白地に焦げ茶色の点々の珍しい色合いのテントウムシだ。ここで虫にあえたのはついている。
「道を尋ねてェんだが、サニーの草むらはどっちかわかるか?」
テントウムシはゾロの背中に乗っているサンジの怪我にすぐ気がつき、サンジの様子を伺った。
「そっちのミツバチ、手当てしねェとやべェぞ。ドフラミンゴの糸か?」
「ああ。だから早く戻りてェんだ」
「とりあえずおれが手当てしてやる。おれは医者だ」
ローと名乗ったテントウムシはあっという間にサンジの手当てをしてくれた。すぐに飛ぶのは無理だが、少し安静にしていれば回復するそうだ。サンジもだいぶ楽になったようで、ゾロも安心した。これはとても助かった。
「ついでだ。案内してやる」
「おお、ありがとなロー」
ローの案内で、ゾロとサンジは森の中を再び歩き出した。そして、ようやくサニーの草むらに戻ってくることができた。仲間たちはみんなほっとした様子でゾロとサンジの帰りを出迎えてくれた。
「ゾロとサンジが帰ってきたぞー!」
「こちらのテントウムシさんは?」
「医者のローだ。森の中で助けてもらったんだ。なあ、これからこのクソカマキリの誕生日パーティーやるんだ、ローお前もメシ食ってけよ」
「サンジ、怪我してるんだから安静にしてた方がいいって」
「いや、だいぶ調子が戻ったぜ。飛ばねェようにすりゃ大丈夫だ。心配かけて悪かったなチョッパー」
料理は既にほとんど仕込みが終わっているらしい。みんなで手分けして準備をはじめ、木のテーブルには豪華な食事が並んだ。
「ゾロ、誕生日おめでとう!」
草むらは仲間たちの賑やかな声に包まれた。スズムシのブルックの朗らかな歌声もパーティーを盛り上げてくれる。
そしてパーティーがはじまって少ししてから、持って帰ってきた黄金の蜜を加工して作ったミツバチサンジ特製はちみつを使用のホットケーキも運ばれてきた。焼きたてのホットケーキはほかほかといい匂いをあたり一面に漂わせている。
そのホットケーキは、甘いものがあまり好きな方ではないゾロでもモリモリいくらでも食べられるくらいにうまかった。パンは嫌いとか言って手をつけようとしなかったローもいつの間にかホットケーキの皿を空にしていた。なんだかんだでサンジの料理がなかなかお気に召したようだ。
途中色々ハプニングはあったが、ゾロは仲間たちが企画してくれた誕生日パーティーをありがたく楽しんだ。
さすがは頑丈なサンジだ、翌日には羽も完治しすっかり元気になっていていつものようにふよふよ飛びながら鍛錬中のゾロにちょっかい出してきた。しかし、ゾロに助けられたとあってか今日のサンジはゾロに対する態度の悪さと足癖の悪さ3割減ってところだ。
「あーあ。昨日はてめェに借り作っちまったなァ。借りはちゃんと返さねェとな」
「じゃ、今度トレーニングにとことん付き合え。走る。遠くまで」
「そんなんでいいのか?」
「弁当を作って持ってきてくれ。見晴らしのいい場所でそれを食う」
「わかった。てめェの好物持ってってやるよ」
「そこで、大事な話がある。すげェ大事な話」
「話?」
大事な話だ。ゾロがずっと心に秘めていた想い。
サンジは不思議そうな顔をしながら、ホットケーキにかかっていたはちみつと同じ色をした金色の羽を可愛らしくぱたぱたと動かしていた。
END
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