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【SS】かぼちゃの重さ当て
パラレル・大学生
続きからです
サンジはいつもよりもだいぶやる気割り増しで、まだ開店前の赤髪スーパーの従業員口に到着した。高校生の時に初労働として選んだこのバイト先は店長も気さくで仕事も楽しいので、大学に進学しても引き続きお世話になっている。
今日は日曜日、毎年ハロウィンの時期にはとびきり大きいお化けかぼちゃの重さ当てクイズのイベントが恒例だ。サンジは去年そのイベントの盛り上げ担当を任されたので料理が得意なことを生かしてかぼちゃを使った料理のレシピの紙を置くサービスなどの工夫をしたらイベントはかなり盛り上がってかぼちゃがたくさん売れた。その実績を買われて今年もかぼちゃイベントの担当を頼まれたわけだ。今年も、自信作のかぼちゃ料理のレシピを書いた紙を何種類か用意した。
「いっぱい仕入れたからガンガン売ってくれよ!」
シャンクス店長に肩を叩かれて、サンジはさらに気合いが入った。サンジの今日の仕事は重さ当てイベントの進行とかぼちゃ売りだ。今日はイベントを盛り上げなければ。
クイズに使うお化けかぼちゃを台車に乗せて売り場まで運んできた。去年クイズに使ったかぼちゃよりもさらに大きいので普通に持ち上げたら、相当重い。このかぼちゃの重さをお客さんに予想して紙に書いて応募してもらって解答を後日発表、ピタリ賞や近い人には景品プレゼントというありがちなものだ。
クイズコーナーと売り場の準備をバッチリ整えて、開店時間になるとチラシの効果もありさっそく結構な人数のお客さんが入ってきた。
「そこのお美しいマダム、かぼちゃの重さ当てクイズしていきませんか?」
「あらやだ美しいだなんて」
サンジが呼び込みすると、主婦さんは気分よさそうにオホホと笑いクイズに参加して、かぼちゃをカゴに入れてレシピも持って帰ってくれた。こうしてお客様が乗ってくれるとバイトもとても楽しい。
クイズの応募もどんどん増えてイベントも盛り上がってきた頃に、入り口の自動ドアから見慣れた男が入ってきた。買い物カゴを手にとって、ポケットから取り出したメモを見てキョロキョロしている。同じ大学のゾロだ。
よくつるんでいるルフィとウソップから友人としてゾロを紹介されてサンジもゾロと顔見知りになった。よく四人で学食で一緒にご飯を食べたりする。ゾロは基本的に無口で会話が盛り上がる方でもないのだが、前にゾロの剣道の試合があるから応援に行くとかでウソップの付き合いでサンジも会場まで一緒に行ってやった時にサンジに衝撃が走った。ゾロのかっこよさといったら反則レベルで、サンジはすっかりゾロにみとれてしまったわけだ。その大会でゾロは優勝した。それから、ゾロを見るとドキドキしてしまって意識していたりする。サンジが自分で作った弁当をちょっとおすそ分けして、ゾロがそれをうまそうに食べるのをドキドキしながらこっそり眺めるというのは何度かしているが、男のダチ同士だしそれ以上何かアプローチしたり想いを伝えるような勇気は出ない。
入り口から近い場所で仕事しているサンジに気づいたのか、ゾロは空のカゴを持ってかぼちゃ売り場にやってきた。サンジがここでバイトをしているというのは仲間はみんな知っている。
「今日は朝からバイトか」
「おう。てめェがこんな時間に買い物なんて珍しいな。お使いか?」
「たくさん頼まれた」
ゾロがぴらっと広げた買い物メモにはかなりの量が書き込んである。気になる相手が自分がバイトしているスーパーに来てくれたというのはサンジにとって嬉しいことだ。
「重さ当てクイズ、応募してけよ。タダだし参加して損はねェぜ。おれ今日ここの担当してんだ」
「重さを当てればいいのか。持ち上げてみるのはアリなのか?」
「ああ。持てそうなら持ち上げてみろよ」
かなり重いかぼちゃだから、今まで何人か持ち上げようと挑戦してみた普通のお客さんじゃ持ち上げるのはほとんど無理だったけれど鍛えているゾロならば持ち上げるのも可能かもしれない。
ゾロは空の買い物カゴを地面に置くと、ひょいっとサンジを抱えあげた。
サンジはしばらく何が起こったのかわからず、ぽかーんしながらおとなしくしていたがゾロに姫だっこされているということに気がついて恥ずかしさのあまりじたばた暴れだした。
「持ち上げていいって言ったじゃねェか。今重さはかってんだからおとなしくしてろよ。うーん……てめェ細ェからな。いくつだろうな。でも意外と筋肉あるから思ってるよりはもうちょいあるかもな。つーか、服とエプロンは込みの重さか?」
「おれの重さじゃねェよ! そっちのかぼちゃの重さだ!!」
わーわー騒いでいると、お客さんたちが一気に集まってきて盛り上がりはじめた。
「おお、力持ちだね、お兄ちゃん!」
「漫才か何かか?」
「店員さんの重さ当てクイズと勘違いしたらしいわよ」
みんなくすくす笑いながらゾロとサンジを見ているから、サンジはカァァとますます恥ずかしくなってきた。
「い、いいからおろせ! 早く!」
「ああ。重さ当てるって、このでけェかぼちゃのことか。おれこういうの参加したことねェからすっかり勘違いした。悪ィ」
めちゃくちゃ恥ずかしい思いをするハメになったがゾロの謎のパフォーマンスのおかげか、売り場にはさらにたくさん人が集まってきてかぼちゃが飛ぶよう売れまくった。怪我の功名ってヤツだ。
あらためてお化けかぼちゃを持ち上げたゾロは、かぼちゃを持って何回かスクワットすると元の場所に戻した。そして、かぼちゃをぽんぽん、と叩きながら自信ありげにサンジの方を見た。
「おれ、多分ピタリ賞当てちまうぞ? いいのか?」
「うわ、すげェ自信だな。どこからその自信が来るんだか」
「どこまで書けばいいんだ?」
「百グラム単位まで予想してくれ」
ゾロは男らしい豪快な字で、予想した重さの数字を応募用紙に記入してサンジに渡した。店員の誰かが知り合いに応募させたり不正がないように、計測は後日行われるから店員のサンジも重さの答えはまだ知らないのだがいいセン行っている数字だろう。
「いつも持ち上げてるトレーニング器具とほぼ同じ重さだからかなり自信あるぞ。当てたら何もらえるんだ?」
なるほど、それが自信の根拠というわけか。いつも持っているものの重さを基準に出した答えならば信頼度は結構高そうだ。
賞はピタリ賞やニアピン賞などいくつか用意されていて複数名該当者がいる場合は抽選となるが、ピタリ賞つまり一番いい景品はテーマパーク……例の夢の国の一日パスポートがペアで当たる。
ゾロは景品一覧表のてっぺんに記載されているペアのパスポートの文字を見て、悪くねェな、と頷いた。テーマパークとか全然興味なさそうなのに意外な反応だ。
「何お前、ああいうトコ好きなのか?」
「特別好きなわけでもねェけど。二枚貰えるなら、気になってるヤツ誘うのにちょうどいい」
「……!?」
ゾロの思わぬ発言に、サンジは盛大にショックを受けた。女の子をデートに誘うために欲しいのか……。今ゾロには彼女はいないのはサンジも知っているが地味にモテているようだし、ゾロにだって好きな女の一人くらいいても何もおかしくはない。
イベントは大成功で終わったのに、シフト後のサンジの気分は落ち込んでいた。
そして後日、かぼちゃの重さ当てクイズの結果が発表された。ゾロが当てると宣言した通り、ゾロが書いた数字そのものが解答だった。ピタリ賞はゾロ一人のみだったから、夢の国のペアパスポートは文句なしにゾロのものだ。ピタリ賞を出した男の子が応募用紙の半券を握りしめて景品を取りにきた、とサンジは店長から聞いた。ゾロは手に入れたペアのパスポートを使って好きな女の子をデートに誘う。
クソーこんなことなら応募してけよなんて言わなければよかった、とかくだらないことを思ってしまう自分がちょっと女々しく感じて悔しくて、サンジは自室のベッドの上でぱたぱたもがいた。
翌日学校でゾロの姿を見るとゾロはサンジに気づくなりこっちに近づいてきた。デートして、告白でもして彼女作るのかと思うと本気で凹むが、ショックを隠しながらもよかったなくらいは声かけてやるべきだろう。
「重さ当て、ホントにピタリ賞だったな」
「ああ」
すると、ゾロはごそごそとカバンを探って小さい紙を二枚取り出し、サンジに差し出して見せてきた。
「で、これ、二枚貰ったから行こうぜ。てめェはいつなら予定空いてるんだ?」
「え?」
おわり
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